冬園のかつて通いし校庭はちいさくもあり新しくもあり
2017/03/08
さわやかな8月の空です。
そよ風が鳴きました
さわやかな8月です
トンネルを抜けると
海という名の草原です
おかあさんが
ふたりの幼い子供を連れて
仲睦まじく手をつなぎながら
とうきびをぼりぼり頬張っています
幼い子供たちも
何やらそわそわしています
幼い子供たちも
何やらそわそわしています
きっともうすぐお父さんが帰るから
嬉しくて飛び跳ねているのでしょう
しずくがきらきら草原にふりかかって
あちこち虹が現れました
あすこにいる人影も腰をおろして
すっかり汗を拭いています
お兄ちゃんのことを
知っているからでしょうか?
三人ともだんだんちいさくなって
あすこのひまわりよりも
もうずっとちいさくなって
とうとうみんなちっちゃい丸になって
あの山の方へと向かっていくようです
弟と妹の声だけが響きます
「お兄ちゃん、お兄ちゃん」って
山の中から広がります。
こだまのように広がります。
賛美歌のように広がります。
今日もお兄ちゃんのいない
さわやかな8月の空です。
6年間の死神
もう戻ってはこないはずの
わたしが少年だった頃
生まれた場所を知ることもなく
犬の人形と寝ていた頃
じっとりと湿った夏の窓辺に
夜ごとのいびきも静まって
隣の町の星のまだらに
故郷と名付けて泣いていた頃
あるいはなにかの知らせのように
あるいはなにかの救いのように
ぎぃこぎぃこ、ぎぃこぎぃこと
怯える鍵を首にぶら下げ
ひとつの椅子に腰を掛けた
もしくは轟くだけならば
それは夕餉のカラスのように
ぎぃこぎぃこ、ぎぃこぎぃこと
軋むようには鳴かぬのだから
夕陽も綺麗に燃えるでしょう
さぞかし恋しく燃えるでしょう
ところが故郷を知らないばかりに
そんな素敵な青春のかけらも
わたしの夏の鏡面では
「死神」の虚像と映るのです
ぎぃこぎぃこ、ぎぃこぎぃこと
椅子に縛られ声も出せずに
ぎぃこぎぃこ、ぎぃこぎぃこと
ふたつの歯車が戦争みたいに
ぎぃこぎぃこ、ぎぃこぎぃこと
じっとみつめる死神みたいに
ぎぃこぎぃこ、ぎぃこぎぃこと
そいつの斧が通り魔のように
ぎぃこぎぃこ、ぎぃこぎぃこ
ぎぃこぎぃこ、ぎぃこぎぃこ
わたしの体は押しつぶされて
ぎぃこぎぃこ、ぎぃこぎぃこと
故郷を知ることなんて出来ずに
ぎぃこぎぃこ、ぎぃこぎぃこ
ぎぃこぎぃこ、ぎぃこぎぃこ
ぎぃこぎぃこ、ぎぃこぎぃこ
ぎぃこぎぃこ、ぎぃこぎぃこ
わたしは見つづけていたのです
歯車をまわす死神に
故郷も知らないちいさなわたしが
ぎぃこぎぃこと
押しつぶされてゆく夢を
わたしは途絶えることもなく
殺されつづけていたのです
ぎぃこぎぃこと死神に。
まったく同じ死神に。
ぎぃこぎいこと死神に。
12の春が終わる頃まで。
少年の木
おい、きみ。
「はい。」
どうしたんだ?
「はい。」
こんなとこで、なにをやってるんだ?
「はい。」
もう学校は終わったぞ。
「はい。」
早く帰りなさい。
「はい。」
ほら、早く帰りなさい。
「はい。」
ふざけてるのか?
さっきから「はい」しか言わないで?
「はい。」
早く帰るんだぞ、いいか?
わたしも帰るから。
「はい。」
どこを見ているんだ?
さっきからそっぽむいて。
「木です。」
木?
「はい、木です。」
(木を見る)
あの木がどうしたんだ?
何もないじゃないか。
「ぼくがいます。」
うん?
「あの木に、ぼくがいます。」
なにを言っているんだ?
からかうんじゃないぞ。
「そいつが、帰りたくないって言っています。」
変なこと言うんじゃない。
早く帰ってゆっくり休みなさい。
いいかい?
「そいつが帰るまで、帰りません。」
わかったか、気をつけて帰るんだぞ?
わたしも今日は疲れたんだ。
さようなら。
また明日、元気に登校するんだよ、いいかい?
「いえ、、、」
(教師がぶつぶつつぶやきながら帰っていく)
「いえ、、、」
(木がざわざわ音をたてながら揺れる)
「いえ、、、」
(木にとまっていた鳥が一斉に羽ばたく)
「いえ、先生、、、」
(少年がちいさな声でつぶやく)
「明日なんてありませんよ、ぼくには、、、」
冬眠
まちの灯りは
ゆらゆらゆらゆら
さまようように
向こう側の世界で
またたいている
穏やかな川面と
わたしの瞳に
そうっと映って
それぞれが
それぞれの表情になる
だんだんと日も永くなり
わたしの孤独もわくわく揺れる
やがて
草木や動物たちも
布団のなかにもぐりこみ
ひそひそとなにかを企てながら
つぎの新しいわたしにむかって
元気よく話しかけてくれる
もうすぐやってくる季節には
そう感じられたらいいな
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つめたい音 の 降った なら この世の中 には あり、余る。 あついお湯 とか ミルク とか あげる、や 欲しい、も あり、余る。 いなくなったり まだいた り。 「それは雪。 これはわたし。」 いまはどちらも いりません。