2017/02/28

幻の海



つやつやな碧空の頬は
相変わらず
投影によって
夜になる。

無色を超える憐れみと
分かりあうこともなく
波濤に夢を
託すのだ。

きっと
飛行機雲めがけて
絵画の中の少女のように
昇っては落ち
落ちては昇りを
繰り返す。

運び込まれるうたをつないで
爪の中につくった
恋の色あいは
洗っても洗っても
消えることはない。

愛おしいまぼろしの眠りのなか
虚ろな綿髪と
罪深いやわらかさを重ねる。

求める者も
波の連なりとなって
消えては現れ
現れては消え

光の糸を紡いでは
ほの薄紅の
誓いのぬくもりを聴く。

心臓のように
硝子はひびわれて
目覚めの幕が
ちりばめられる
血潮の破片は
水平線のむこう。


猫観察



クローゼットは閉じている


なのに猫は手で、いや前足で

それをつたなく開けようとする

あたまをしたうえ、ひだりみぎ
あたまをしたうえ、ひだりみぎ

こんこんとんとんこんととん

とんこらとんとんこらとんとん

とんこんとらとらこんとらこ

「にゃにがあるんですかねぇ?」

のぞいてる、ハハ、のぞいてる。

開けてやらないよ、もう。

あきらめたか、やっぱり猫だよ。

しっぽをしたうえ、ひだりみぎ
しっぽをしたうえ、ひだりみぎ

ふらふらぱたぱたふらぱたん

たんぱらたんたんぱらたんたん

ふらぱんゆらふらたんふゆら

どこをみてるのさ、さっきから

そうやってふてくされるんだな

あらあらもうねむるんかいな

からだをまるっとまるめこむ
からだをまるっとまるめこむ

ごろごろまるまるごろぴくん

ごんぴらごろごろぴらごろろん

ぴらごろまるまるぴくごろん

まるごろすやすやごろにゃんぴゅっ

まるごろすやすやごろにゃんぴゅっ?

ごろにゃんぴゅっ?ごろにゃんぴゅっ?

ごろにゃんぴゅっったらごろにゃんぴゅっ



Cherry Tree /J672便



Cherry Tree/J672便が着陸します。

分厚く振り返りながら、現在PM2:59
大気圏にはごま油さながら天桟の羽衣
ヴィルストリープ伯爵、承りました。

「滑走路は十分にMt.Fuji-Good.Blue!」
秘密鍵の保有者は直ちに白状するように
パイプラインは国際サイトにでっち上げられた
事前交渉は権力者のイリーガルとして宣言する。

やあモリブデン5.76μg、元気かい?
Mail waterがとても幻想的だったね。
ごまかしが本質的に排斥・追放されたてたよ
幸いなるプラズマを希求する托鉢だね

どこにいても「暗澹、映るよ」並びに、深森。
見えないものに、輝きこそ潤うものさ。
プラットの舞踊や呪文に癒されるのも似合うね
陽酒を浴びながらWalk overも安らかでいいんだ

リグリルの竜巻が旋回中!
ヴィルストリープ伯爵に至急、連絡を!
脱出せよ、脱出せよ、SAFTY.Myth!
“生”は目的か手段か、選択肢はLog以上存在!

0%〜既成の計画を変更する義務が発生
レスポンスは2050年、枝透月の晩に返信する
泳ぎ続けるんだ、精一杯。沈まぬように。
苦痛は純へと澄み切っていくはずだから。

Cherry Tree/J672便が着陸完了。
乗員乗客の無事を確認、よかった。
ヴィルストリープ伯爵に吉報を。
「明日は快晴」と受け取った
愉快な一日を。



2017/02/27

地球の端っこ




四つ、いや六つの電球に灯されて

この地球の端の端に座る。

此処に辿り着くまで
だいぶ手間がかかってしまいましたよ。

昼の空気はとても冷えていました。
そして「ひがし風」も強くて。
さらには、渡りきることも無く
長い長い信号島に漂着しました。

その間に、ぼくは辺りの風景を
向こう岸から気づかれないように
そして
拒否するようにして
見渡してみたのです。

「白い車が多いなぁ。」

白い車がよく目に入った、それだけです。
そう、それだけですよ、それ「だけ」。

すると。
ようやくすべての流れが止まったのです。
(とはいえ、いつも通りの窮屈な街です)

まぁ、なんとか向こう岸へたどり着いたのですが、、、
はぁ、又ですよ、、、又。

また、赤なんですよ。

「急いでいるわけじゃあないしなぁ。」

けれども「ひがし風」は相変わらず冷たく、強いのです。

そのあとは、取り立てて言うこともありません。
コンビニから人がひとりでてきた、とか。
同時にコンビニへ人がひとり入っていった、とか。
後頭部が絶えず寒さで割れそうになった、だとか。
それぐらいしか思い浮かびません、、、、

うん?

いや、すっかり忘れてた。
そうだ、そうそう、そうなのだ。
忘れてはいけないことがありました。
それが今日の一番の光景、、いやいや
「幸景」だったのです。
むしろそれを言うつもりだったのですよ。

なにが「だけ」ですか。
なにが「取り立てて言うことは無い」ですか。
あるではないですか、しっかりと。
一生忘れられないような出来事が。

そう、それはあの長い長い信号を
渡りきった後の出来事なんですよ。

さっきも言いましたけど
ぼくが信号を渡りきった後に見た光景は
コンビニに出入りする人たちでした、よね?
その直後なんですよ。
その直後にその出来事があったんですよ。

たしかそれは楽器店の、、、入り口あたりでしたっけ。
ぼくはそのお店のショーウィンドウに
気を取られていたんですね、すっかりと。
大きなピアノや大きなディスプレイがあってね。
向かい側の世界がガラスにとても美しく映っていたんですよ。
不思議なものですよね。
なんてったって、直接見るよりも綺麗なんですから。
ぼくは時々思うんですよ。
この街の風景がすべてガラスに映った世界であれば、と。
そうしたらこの街に漂うガスの匂いや、雑多な騒音や
目を錯覚させるような喧噪に悩まされなくて済むと思いませんか?
ぼくはいっそのこととびっきりの「ろまんちすと」になれたら
どんなに幸せだろうと思うんですよ。
もしそうなれば、いつ最後の審判が来ようが
まったく気にならなくなるのでしょうからね。

まぁ、これ以上言い続けても、、、ですよ。
勿論、不幸な想像を逞しくするよりは「まし」なんですがね。
いま一番言いたいことはそんなことではないですから。

そうなんですよ。
ぼくがその楽器店の入り口あたりに着いた時とですね
ほとんど同じタイミングで親子三人が後ろの方から
ぴたりとくっついてきていたんですよ。
ひとりはおそらく父親で、あとのふたりは兄弟でしょうね。
その兄弟はちいさくて、7歳と10歳くらいに見えましたね。

それで
ぼくのこころをとても強く揺さぶったのはね
冷たい「ひがし風」なんかではないんですよ。
その時にも相変わらず吹いていましたけども。
そうではなくてですね。
その兄弟なんですよ、こころを揺さぶったのは。
それはほんの一瞬の出来事だったんですがね

 「兄がくるりと廻ると
  弟がにこにこ笑う」
  のです。

たったこれだけのことなんです。
だけどぼくはそれがとても嬉しかったんですよ。
あの可愛らしい笑い声は忘れられませんね。
まるで映画のワンシーンのようでした。
いや、どんな脚本にもなれはしませんよ。
あの瞬間のふたりの喜びは。
まさしくすばらしい光景、、、いやいや

「幸景」でしたねぇ。

それにしてもこの街はどうしたことでしょうか。
ぼくのことを早速現実へと連れ戻すのです。
なにがって?
決まっているじゃありませんか。
信号ですよ、信号。
それと「あづま風」、、、
いや間違えました、「ひがし風」。
どちらでもいいんですけどもね。
どちらも「東」ですから。

とまぁ、そんなようなことがありまして
ぼくは今ようやくここに辿り着いたのです。
どこって?
決まっているじゃありませんか。

四つか六つかの電球に灯された
地球の端の端の、そのまた端に、ですよ。 



2017/02/26

緑が生まれます



朝起きると
大腿の右側から
緑が生まれます。
屈伸すると、
nyon、nyoin、nyon、nyoinと
緑がサワサワ生まれてきます。

外に行くときは隠します。
ぐるぐる包帯を巻き付けて
nyon、nyoinと出てくる緑たちを
強引に押さえつけています。

家に帰ったときですよ、大変なのは。
巻いてあった包帯を外しますと
生まれてくるのです。
緑ではないですよ、それは。

一頭身のオレンジ色の
ほのかに焦げた匂いを放つ
だるまみたいな風来坊が
pyon、pyoin、pyon、pyoinと
分子みたいに飛来するのです。

家中が夕暮れ、絶景ですよ。
壁に張付いたり、外へ飛び出たり
片付けないといけないんですけどね。
疲れますけど、綺麗なんですよ。
神秘というか、、、奇妙というか。

で、一通りそいつを掃除し終わると
静寂につつまれるんです、静寂に。
音もなく風もなく色もなく無感覚。
ひとりでに目蓋がふぅ〜っとね。
この瞬間が心地よくて、とっても。

、、、とまぁ
こんな一日です、わたくしは。
ひゅし、おやすみなさい。



メランコリック



キャベツの森の中
愛らしいメランコリー
ちいさな指は泥だらけ。

幼い唐辛子の実を包みましょう。
空にプリズムをあずけてね、さぁ。
水の公園まで、硝子の自転車でさ。

ご覧、「丁寧に渡りましょう」って。
ほら、用意を済ませてね、早く。
そのあと蒼の埠頭へいくからね。
もちろんパイロットはしゃきっと、ね。

ハッブルの鐘がきこえてきて
牡丹雲も天いっぱいに広がって


———でも、あのころとは、、、







ねぇ、ほらあそこ。
海猫のシンフォニーも素敵ね。
ぶつかり合って溶け合って
きらめき合って消え合って

おいでよおいで、連れておいで
泥をぬぐって下さいな。
海を届けて下さいな。
星をつくって下さいな。

メランコリック、メランコリック。
とっても素敵なメランコリック。
キャベツの森が遠くで光る。

ちいさなちいさなメランコリック。



風の便り



深い濃い町並みを受け取った。


風の便り。
郵便受け。

片方のくちもとに笑くぼが咲いた

重なって溢れる空気をひらくとうれしい

彷徨っていた昨日とは、もうすれ違った

蒸発した葉脈。
太陽の帆船。

2月のふしぎを旅人たちが訪れる

太平洋はちいさなコップに蒼くて

雲の子守唄が遠くまで遠くまで、、、

仄暗く口づける。
時を映すかがみ。

羽ばたくたびに呼応してくれる海のシリウス

なみだを束ねてからすくいあげた砂のしぶきに

みみを悲しませると、鼓動の香りが甘いのだ。

風の便り。
深い濃い町並みで。