2017/02/11

おでん






生きがいを
見つけられたら
いいね。


ぼくは、おでんに
言われた。


大根は
出汁が染みて
うまかった。


テナントシナモンデスティニー



洋菓子をポケットから取り出す
コースターぐらいの大きさ
重さは大体5g〜7gくらいか
四角形の上部に扇を付けたような形
かどは丸みを帯びている
生地はパンで、胡桃やプルーンが埋まっている
飴色をしていて、いかにも甘そう
崩れないように型紙に張り付いている

午後4時も過ぎた
外は薄暗くなってきた
かすかに車の行き交う音がする
外は寒そうだが室内は暖かく、22.3℃もある
空調の音がよくきこえる
カレンダーはまだ年を明けていない

水を飲み、頬杖をつき、裏面を眺める
特に感じることはない
食べなくても半年は保つ
デザインもずいぶん陳腐だ
さっそくビニールの包装を二つに裂く

洋酒の香りが漂う
春の花園のように
この空間いっぱいに漂う
ルネサンスの建築、並木道、アベニュー
放射状の石畳にある噴水
その周りを走り回るこどもたち 
シネマのような光景が脳裏をよぎる
眼を閉じれば少なくとも

ここは東洋ではない!

こんなに小さなものが
包装という暗闇から解放されただけで
まるで別世界が現れることなど
誰が想像できただろうか?
小さな町で生まれた
たった一人の英雄が
いつの時代もこの世界に
三原色の波紋を広げてきたように

今その英雄は、この未熟な若者の
掌の中で輝きを放っているのではないか?
数え上げてもきりがないほどのスモッグを
鮮やかなまでに吹き払い
無機質な静寂に包まれた
独房のようなこのテナントを
まるで夢の都へとがらりと一変させた英雄が!

いつの間にか陽はすっかり傾いてしまった
月がとても清らかに見えている
もう午後5時を過ぎた
「時間は剣を持った天使」
とは誰が言ったのだろう?
まさに言い得て妙ではないか

あの月を輝かせたものは一体何であろうか?
しかしまた、この英雄を殺すのものも何であろうか?

それならばこう言い聞かせよう
こう言い聞かせることにしよう

今から行われる行為は、
「時間と精神の相互作用に関する、生理反応における
感性科学的アプローチを用いた実証的思考による、
倫理構造解明のための実験」
であると。

もう迷いは無い
何をためらうことがあるだろうか?
生きている限りにおいてこの現実世界では
時間と精神の間に「スペースキー」を打つことなどできないし
ましてどちらか一方だけを「delete」することもできない
百も承知のことではないか?これは野暮な比喩か?
いやそんなことは無い。世界に通用する比喩だ。

戦争なんて知らないさ
だが今は紛れも無く開戦前夜だろう
口火を切るなんてよく言ったものだ
覚悟はできてる。
一口で片をつけてしまおう。
もしできなかったときには、
この国のおなじみのやり方で逝ってやろうではないか?

、、、うん?
なかなか大きいな。
一口は言い過ぎたか、、、?
、、、あれゅ?
何の味だ、、、これは。
しな 、、、もん、、? 
シ、、、ナモ、、ン、、?
]¥39し?ythanな[:_^も?i7ん$%”!”{}!

<追伸>
わたしはそのあと彼の肉体を
静かに、そしてやさしく
柔らかいパルプに包み込み
涙と共に、墓場へと葬った。



ナナカマドの実



ナナカマドの実
とっても赤いわ
街も冷え込みそうね
ほら、甘い眠りの鐘が鳴る

かあいらしい雪ん子や
瑞々しい夢を
結んで頂戴

見て、氷の砂。
肌にあたると溶けるのよ
あの日みたい
それはね、、、

熱くて蒼くて透き通ったビー玉
潮の香りのこおり菓子
スモモみたいに甘酸っぱいの
花や雲さえ汗かいて
樹の芽は喉をカラカラにして
風に叫んでいたものよ

だけど、緑の星屑は
あっという間に黄昏れて
鋭いとげの氷の風に
銀の火の粉を散らすのよ
キラリ、キんラリ、キラリんと、、、

大変だわ、空のお化粧
もう剥がれ落ちてきちゃうなんて。
ほら、氷の砂。
噛みしめましょうか? ご一緒に。
ほらね、涙の味がする、、、

おうい、おうい、どこへ行った?
やあい、やあい、どこへ行った?
あたしの足跡はどこへ行った?
やあい、やあい、おうい、おうい。
はぁ、せっかく深く刻んだのにさ。
でも仕方のないこと。
だって向うのお天道様でさえ
雪を被って沈んでゆくんですものね。

ねぇ、とっても赤いナナカマド。
この街もいつかは雪の中へ
埋もれていってしまうのでしょう?
それならあたしに頂戴な。
あたしの胸を沸かせるような
とってもとっても赤い実を。

ぷつり、ぷっつり、ぷつりんと
ぷつり、ぷっつり、ぷつりんと、、、

氷の砂漠のその真ん中に
あたしのこころの
真っ赤な果実を捧げましょ。




こんな出逢いがありました



坂を少々くだったあたりで

こんな出逢いがありました

ぼーっと燃える亡骸でした
夏の終わりの夜でした

とても綺麗な空でした
少し寂しい裏道です

雨も上がった後でした
草木も露に濡れています

アスファルトだって泣いています
野良猫だって泣いています

月のひかりも合掌です
コオロギたちも合唱です

湿った風の精霊が
煙を運んでゆきました

別れの言葉は鳥たちが
やさしく運んでくれました

こんなところで恐縮ですが
私は見ぬ振りしてました

見捨てたわけではありません
孤独は無二の親友ですから

私は怖くなったのです
暗闇だからじゃありません

炎が灯っていたからです
ずぅーと灯っていたからです

遠くで振り向き見てみても
ずぅーと灯っていたからです

けれども忘れはできません
夢の中でも燃えるのです
苦しい顔して燃えるのです
私は捨ててはいないのに
私は捨ててはいないのに

いまでもぼーっと燃えています
小さな亡骸 燃えています

私は捨ててはいないのに
私は捨ててはいないのに


声なき声を




1万年も前のこと
何故こんな気持ちになる
何も知らないはずなのに
何故こんな気持ちになる

笑顔の人々
言葉が泣けば
悲しい笑顔に。

争う人々
言葉が笑えば
喜劇役者に。

過去は未来に
今日は明日に
命令できない

昨日の声は
声なき声で
笑いもすれば
泣きもする

その声を聴く人だけが
そのことを知っている。
その声を聴く人の
言葉だけが
声なき声を
知っている。

1万年も前のこと
何故こんな気持ちになる
何も知らないはずなのに
何故こんな気持ちになる