2017/03/04

異国の空港



空港の

エントランスで
脱ぎ捨てた

真っ白な靴を
脱ぎ捨てた

裸足で飛び出し
着いたのは
ぼくの知らない
国だった

おもむろに
バスに乗り込み
外国人から
じろじろ視線を
浴びていた

傍らに
座っていた
その人は
ぼくの背中を
殴っている

耐えられず
一番後ろの
真ん中の
青い椅子で
肩をすくめた

片方は
黄色い髪の
少年で
もう片方は
黒い髪の
女性だった

少年が
眺めていた
タッチパネル
ぼくの名前が
流れていた

どこかへと
バスはとうとう
辿り着き
下車してみると
ふりだしだった

空港の
エントランスに
もう一度
ぼくは急いで
駆けていった

脱ぎ捨てた
真っ白なぼくの
あの靴は
知らない誰かに
盗まれていた


涙に音があるならば



涙に音があるならば

わたしは窓を
開けましょう

それは優しい
雲でしょう

昨日の匂いも
届きましょう

明日に星も
見えましょう

つまずきながらも
進めましょう

すこしは悩みも
消えるでしょう

けれどもわたしは
進んだところで

いったいだれを
愛せましょう?

わたしはだれかを
愛せないのなら

わたしはわたしを
愛しましょう

そうしてわたしを
愛したあとで

愛するだれかを
見つけましょう

そういうだれかを
見つけたならば

わたしはこころの環状線を
みんながすべて眠ったあとで
き恥ずかしそうな風に吹かれて
二人っきりで歩きましょう

こころをぐるりと
歩いたあとで
わたしは涙を流しましょう

そうしてじぶんを愛せるように
ひたすら涙を
流しましょう

そうして誰かも愛せるように
ただただ涙を
流しましょう

涙に音があるならば
わたしはだれかを愛せましょう?
涙に音があるならば
わたしはわたしを愛せましょう?


星屑の朝



巨大で、奇怪な
そしてそれだけに
ひときわ孤独な鋸雲の分厚い帯を
太陽が時間をかけてくぐり抜けた。
一切が変色していたのだ、鮮やかなほど。
さっきまでの燃えるような
円熟した針状光粒子ではなく
新たに生まれた星のように若々しく閃いていた。
まぶしさがやさしく瞳を冒す。
いつものように、影が生まれた。