2017/03/08

少年の木



おい、きみ。


「はい。」

どうしたんだ?

「はい。」

こんなとこで、なにをやってるんだ?

「はい。」

もう学校は終わったぞ。

「はい。」

早く帰りなさい。

「はい。」

ほら、早く帰りなさい。

「はい。」

ふざけてるのか?
さっきから「はい」しか言わないで?

「はい。」

早く帰るんだぞ、いいか?
わたしも帰るから。

「はい。」

どこを見ているんだ?
さっきからそっぽむいて。

「木です。」

木?

「はい、木です。」

(木を見る)

あの木がどうしたんだ?
何もないじゃないか。

「ぼくがいます。」

うん?

「あの木に、ぼくがいます。」

なにを言っているんだ?
からかうんじゃないぞ。

「そいつが、帰りたくないって言っています。」

変なこと言うんじゃない。
早く帰ってゆっくり休みなさい。
いいかい?

「そいつが帰るまで、帰りません。」

わかったか、気をつけて帰るんだぞ?
わたしも今日は疲れたんだ。
さようなら。
また明日、元気に登校するんだよ、いいかい?

「いえ、、、」

(教師がぶつぶつつぶやきながら帰っていく)

「いえ、、、」

(木がざわざわ音をたてながら揺れる)

「いえ、、、」

(木にとまっていた鳥が一斉に羽ばたく)

「いえ、先生、、、」

(少年がちいさな声でつぶやく)

「明日なんてありませんよ、ぼくには、、、」




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