おい、きみ。
「はい。」
どうしたんだ?
「はい。」
こんなとこで、なにをやってるんだ?
「はい。」
もう学校は終わったぞ。
「はい。」
早く帰りなさい。
「はい。」
ほら、早く帰りなさい。
「はい。」
ふざけてるのか?
さっきから「はい」しか言わないで?
「はい。」
早く帰るんだぞ、いいか?
わたしも帰るから。
「はい。」
どこを見ているんだ?
さっきからそっぽむいて。
「木です。」
木?
「はい、木です。」
(木を見る)
あの木がどうしたんだ?
何もないじゃないか。
「ぼくがいます。」
うん?
「あの木に、ぼくがいます。」
なにを言っているんだ?
からかうんじゃないぞ。
「そいつが、帰りたくないって言っています。」
変なこと言うんじゃない。
早く帰ってゆっくり休みなさい。
いいかい?
「そいつが帰るまで、帰りません。」
わかったか、気をつけて帰るんだぞ?
わたしも今日は疲れたんだ。
さようなら。
また明日、元気に登校するんだよ、いいかい?
「いえ、、、」
(教師がぶつぶつつぶやきながら帰っていく)
「いえ、、、」
(木がざわざわ音をたてながら揺れる)
「いえ、、、」
(木にとまっていた鳥が一斉に羽ばたく)
「いえ、先生、、、」
(少年がちいさな声でつぶやく)
「明日なんてありませんよ、ぼくには、、、」
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