2017/12/27

かげぼうし




産ぶ声はるか
鳴りわたれども
巡るものなら
くるしみは

ましろな炎の
咲きあふれても
こごえる頬なら
くるしみは

いのちの跡さえ
埋もれるみちが
救いになるなら
くるしみは

くるしみは
くるしみは
くるしみは
かげぼうし


2017/12/26

転寝の唄



語りかける鳥
見つけたよ
見つめるたびに
知らぬふり

野良は雑木に
入り浸り
帰りの道に
鳴いておる。

甘い木の実を
見つければ
奴らに食わせて
みたくなり

空は遠くに
日和して
蛙もついに
泣いておる。

うたた寝みたいなお歌ださぁ
火照るてるてる坊主はさぁ
つるつるつるつる
つるつるる
ぽつりぽつぽつ
ぽつぽつり

泥にまみれた
長靴に
奴らは花を
植えてらぁ

あっぱれあっぱれ
もっとやれ
どっこいどっこい
どっこいしょ

(いやぁ、えいやこりゃこりゃまた失礼。
 風はどこにでも吹いちまう。
 下へ行こうが上へ行こうが。
 右によけりゃ左にあたり
 よろめく拍子にのこったのこった。
 あっという間に追い詰められて
 いっつも土俵際ださねぇ。
 そりゃあ行司もいるさねぇ。)

しわっ面した
木の幹で
奴らは蜜を
吸ってらぁ

あっぱれあっぱれ
もっとやれ
どっこいどっこい
どっこいしょ

うたた寝しながら
ないていた。
雨もざぁざぁ
ふっていた。

2017/12/24

月はなくとも



月はなくとも

こえはなくとも。

照らしてくれる

照らされる。

(この驚きに迷いはなくて


はじまりそうな孤独な旅に
ほどけた糸を
結んでゆく。

(いつしかすべてが羽ばたいて)


知らないうちに

つめたい身体は
何かを引きずり
歩き出す。

(息つぐことを知らないままで


颯爽たれ
夜明けに生まれる
この驚きよ
新芽のような
驚きよ
颯爽たれ

月はなくとも
こえはなくとも。

2017/12/22

吹雪にさよなら




つめたい音
降ったなら
この世の中には
あり、余る。

あついお湯
とか
ミルク
とか
あげる、や
欲しい、も
あり、余る。

いなくなったり
まだいたり。

「それは雪。
 これはわたし。」

いまはどちらも
いりません。


2017/12/21

最期の風景



 
 忙しない鳥のさえずりも
 子守唄のように心地よく聞いた。
 夢で出会った乱暴な孤児たちには
    小さなえくぼを授けようとした。
 戸惑いや悲劇の人影が生まれてゆくのも
 やはり見過ごすことなどできずに
 自分の痛みのように受け取ろうとうずうずしていた。
 まるできみは晴天の太陽に憧れる眼差しそのものだ。
 それも嫉妬がいっさい手を上げないほどにまっさらな憧れだ。
 けれど、ほら見てくれ、ぼくの吐息は白くて冷たいままさ。
 いったいいつになったら暖かくなるのだろう。
 
 きみは遠くで燃えさかる宇宙に打ちのめされてしまった。
 迫り来る大火事のなすがままだった
 それなのにきみは被虐趣味でも持っているかのように
 平気そうにして笑っている。
 だから逃れるどころかますます飼いならされて
 苦しみのすべてを受け入れてしまいそうになっている。
 ああ、もしもきみが天性の役者ならぼくはお礼を言うよ。
 それは喜ばしい裏切りなのだから。
 けれど役者がどんなに素晴らしい演技をしたところで
 脚本がそれを全て台無しにしてしまうこともある。
 いったい誰の手でつくられたのだろう、きみの脚本は。
 
 (ぼくが演じるとすれば
  それはきみに毒薬を渡す死神だ。
  ぼくはきみが消えてゆく様子を一番近くから観賞したい。)
 
 不意にぼくは心配になった。
 その予感が当たってしまうような気さえするから。
 もしもきみの心の花束が暗闇に囲まれて
 そこにほんのわずかでも光の雨が降り注いだなら
 (それはきっとぼくの目をも欺くほどの美しい絵になる。)
 きみはその宗教画をなんとしてでも守り抜こうとするだろう。
 けれどそのために却ってきみは
 悪意なき誰かを傷つけてしまうのではないだろうか。
 その時ぼくときみとの間にはひとつの悲劇が生まれる。
 でもぼくらはそれを墓場まで運ぶ術を知らないし
 誰かが見つけてくれる前にきっと朽ち果ててしまう。
 ああ、どうして涙にもならない苦悩に価値があるのか。
 
(きみはぼくを殺すかもしれない無邪気な動悸を
 決してみずから止めようとはしない。
 きみはなにかを救おうと思うあまり
 自分への救いを求めてしまった)

 
 ぼくはふと後ろを向きながら歩いた。
 すべてのものが遠のいてゆく。
 がらんとしたこの道にただひとり。
 ぼくを追いかけるものは何もない。
 前を向くと再びぼくは何かに導かれてゆく。
 ぼくはもう何も追いかけていないはずのに。
 ただ目に映るものを見ているだけだ。
 ほら、夜空には今日も巨きな星がある
 こんなにも美しい銀河の中に。
 ぼくもいつまでもここにいるつもりさ
 けれども冷たい夜よ、どうしてお前は
 ぼくの吐息をこんなにも白くした
 ああ、すべての愛おしい天の輝きたち、さようなら。
 ぼくは一刻も早く本当の温もりに包まれようと思う。
 
 ぼくはきみが空をじっと見つめる姿を見てこう思った。
 きみの見つめる空は決して新しくも古くもなることはないが
 空に見つめられるきみはやはりそうではないのだと。
 (敬虔でありさえすればきみも生まれ変れるだろうか。)
 きみは果てしないものに答えを見いだそうと必死にあがいている。
 ありきたりな存在から抜け出そうと企てている。
 ぼくらは何かが生まれたり死んだりする理屈を
 同じようにわかり合うことができる。
 けれど生と死についての意味や目的をわかり合うのは
 とても難しい
 今のきみとは特に。
 だからぼくらは
 本当に夜が明けるまで
 静かに寝返りを打てばいい


2017/12/16

雪が降る、屋根に降る。



雪が降る 
屋根に降る
僕は窓から
それを見る

屋根を見るのか
雪を見るのか
僕はどちらを見てるのか
雪よ本当は
どこに降る
屋根があるから
屋根に降る
けれど本当は
どこに降る

雪をつかめば
 手の中に
 冬と春とが
 訪れる)
 いったい僕は
 どこにいる
 冬と春とは
 どこにある

ここまで何にも
さえぎられずに
雪が降るのを
僕は見る
屋根を見るのか
雪を見るのか
問いかけばかりが
降り積もる。



2017/12/11

旋毛曲がりの秋




 影像(わたしの4分の1のひとり=Quarter)は

 冷たい風の吹く崩れそうな橋の上にいた。
 次に掲げる詩はQuarterが見た
 その瞬間そのものである。
 {なお表題は後からつけたものであり
   内容とは別の過程を経ている故に
   Quarterとは無関係である。}
 
 「旋毛曲がりの秋 」

  雲の流れる川面に

  一握の紅葉を
  散りばめて
  じわりじわりと
  沈んでゆくのも
  そんなものさと
  思いたかった
  旋毛曲がりの
  いない秋。
  
「あの紅葉のように
 私Quarter)も。。。」と。
 
 ここで影像(わたしの4分の1のひとり=Quarter)消えた。

 わたし(わたしの4分の3を総べるわたし

 ただ呆然と立ちすくんでいた。
 しばらくしてからわたし(わたしの4分の3を総べるわたし)は
 遠くの雪山の白さに混乱しながらもそれを受容した
 そのまま抵抗もせずにQuarterの死を白状した。
 
 「冷たい秋とわたし(Quarter)の秋はもういない。」