種子赤く 萌えて山端の 流星は 哭くだけ哭けよ この天穹に
2017/04/26
2017/04/20
2017/04/18
Getreideregen
枯れ草色の太陽。
どうか心を開いて。
あなたは大地をあまねく照らして
何も食べずに沈んでしまう。
こんなにわたしは残酷なのに
この橋を渡ればあの山の向こうへ
ゆっくり青い闇夜が渦巻いている。
鳥が飛ぶときにわたしは帰る。
草がわたしの足を掴んで
さんざん 時を刻んでも
わたしは帰る 帰るだけ。
想いを馳せる 馳せるだけ。
わたしは怒る 怒るだけ。
この儚い暴風雨よ
あの赤々と燃えたぎる剣の先端を
お前ならいとも容易く砕けるだろう。
この氾濫しやすい幾つもの川よ
満ち潮の爪痕を妨げる武器を
お前なら遥かに越えてゆけるだろう。
砂利道の上をさんざめく蟲たちよ
この水面に散りばめられた反射光を
お前ならもっと醜悪にできるだろう。
さもなくばお前たち尊い無頼の放浪者。
わたしに何も吐き捨てずに立ち去れ
わたしはお前たちの逃げてゆく姿を
決して追いすがるようなことも憐れむことも
ましてや嘲るようなこともきっとしない。
わたしはわたしで見るものがあるのだ。
お前はお前で見るものがあるのだ。
わたしにはそれをなおざりにする権利がない。
お前にもそれをなおざりにする権利がない。
もしお前が陽の沈む方に向かって枝を伸ばしても
わたしがその枝を切り取ることは許されない。
もしわたしがこの黒い瞳を陽の昇る方へ向けても
お前にその光を遮ることは許されない。
わたしは進む 進むだけ。
お前も進む 進むだけ。
どこかへ進む 進むだけ。
2017/04/12
仮説 [ア]
幾万という言葉が雪崩のようになって
ある有機体の神経を震わせたならば
その有機体の必要性がまるで隠滅せられる。
生身の、純然な、あやふやでない有機体は
この視界から消え、実体さえ危うくなる。
どこに存在するのかを暴こうとしても
その存在はすでにどこかにあるものではなくて
なかったものが元々あったかのように
脆弱で不透明で不安定で場当たり的な土台の上に
さも誠実で真実らしい顔を無理やり整えられた状態で
意地悪さや不本意の契約書にも無抵抗なまま
「存在」という名前で台帳に書き上げられる。
暴くのではなくて、工作される。
計られている。
居なければならない場所が錯覚される。
”なくてはならないもの”が企画され共有させられる。
誇張を比べ合う。
事実や尤もらしさを比べ合う。
ひれ伏す行為さえ品評され、売られ捨てられ遊ばれる。
嘆くことも喜ぶことも窃盗も憐れみも散漫な愛に換えられる。
合理性のみが正しいように思われる。
2017/04/08
光れ!
はるか遠く
そのまた遠く
どこからともなく
ハープの旋律が
聴こえたころ
穂麦も揺れる夏空の下
薄紅色のせせらぎを
ざぶんあざぶんあ
ざぶんざぶんと
ヒノキの小舟で
妖精たちがやってきました。
水素分子よりは少し大きく
ひまわりの花びらの色をして
黄金の頭巾を被った彼らは
まあるい瞳を朱色に染めています。
学名では「ゴロ」というらしいのです。
1ダースずつ左右に分かれて
舟に乗っているゴロたちは
デンシ石と呼ばれる鉱物をはめこんだ
ギザギザの桃色ステッキをオール代わりにして
ざぶんあざぶんあ
ざぶんざぶんと
息を合わせて舟を漕いで行きます。
ざぶんあざぶんあ
ざぶんざぶん。
舟はどうやらどこかの岸辺に到着したようです。
ゴロたちは岸辺に小舟を停泊させますと
今度はさっそく
小舟の舷に磁石みたいにくっついていた
長さ1㎞以上はありそうなファイバーの梯子を
雲の方に向かって重々しそうに立て掛けました。
そしてゴロたちは梯子を掛け終えると
蟻の行列みたいに綺麗な1列になってその梯子を
ぞろりぞろりとみんなでかけのぼっていきました。
もしも途中で誰かが息を切らして
動けなくなった時なんかは
意地悪なゴロは
背中を踏んづけて追い越してゆきますが
心優しいゴロは
背中を押して助けてやるのです。
そうしてぞろぞろのぼっていくようです。
見たところどうやら
天井辺りは薄い硝子の膜になっているようで
遠くに宇宙らしきものが微かに透けており
ゴロたちも瞳をぱちくりさせて
自分の姿やその先の方を見やっています。
ぞろりぞろりとかけのぼってゆき
やっとのことでみんなが到着いたしますと
一番先に着いたゴロが
ひとりひとりに点呼をとってゆき
しっかりと全員到着したことを確認しました。
どうやらゴロは全部で24ゴロいるようです。
そしてその後6ゴロ×4班に分かれたあとで
各班ごとにそれぞれのやりかたで
眼をつむって何かをお祈りします。
それが一通り終わりますと
各班はみんな一旦中央に集合して
各自ポケットにしまっておいた
雨粒を編んでつくったはちまきを
おでこか頭の境目辺りに巻きました。
なかにはわざと目元を全部覆ってしまい
変に踊っているひょうきんなゴロもいて
そいつをみんなで笑ったりなんかしています。
中央に集まったゴロたちはどうやら
ピストルの合図を待っているらしく
なにやらみんなそわそわしている様子です。
ゴロたちの真上でひとつに固まっていた雲も
いつの間にか4つの雲へと分裂してしまい
辺りの空気も一気に冷たくなってきました。
すると間もなく
「パアン」という高い音が鳴り響き
草の上で寝ていたゴロも慌てて池に飛び込むと
4つの班に分かれていたゴロたちはそれぞれ
ついさっき中央から分裂した4つの雲の方角へと
いっせいに走り出して行きました。
各班のゴロたちはそれぞれ4つの雲の下に辿り着くと
さっそくその雲に色をつけはじめました。
泥や岩や草花や、微粒子や微生物の死骸など
手分けして探してきた様々な材料を
砕いたり削ったり叩いたり
水に溶かしてかき混ぜたりと
ゴロたちはせっせと試行錯誤を繰り返しながら
各班ごとにいくつもの色をつくってゆきました。
早くにつくり終える班もあれば
夏空が綺麗な夕景に変わる頃になっても
まだ色をつくり続けている班もありましたが
どうやらみんないよいよ完成したらしく
銀色のバケツいっぱいに入った塗料を
さっきまで綿毛のように白かった雲たちに
「ざぱぁ、ざぱぁ」と
岩肌に打ち寄せる波のような音をあげながら
勢い良く浴びせかけていきました。
夏の陽もすべて傾いて
辺りが紫紺色いっぱいになった頃には
綿毛のように白かった雲たちは
もう様々の色を浴びたために
ブルーやグリーンやオレンジといった
そういった鮮やかな色なんかではなくて
美しい水墨画の中の繊細な風景のようになっていました。
ゴロたちはそうして雲がすっかり染色された次には
ゴロたちが最初小舟に乗ってきた時に使っていた
あのデンシ石をはめこんだ桃色ステッキを使って
すっかり染色された雲の底の面のところどころに
手分けをしながらいくつもの窪みを掘っていくのです。
まるでバニラアイスをスプーンですくう時のように
シャクシャクシャクシャクと雲の底を掘っていくのです。
雲を削り取っていく途中でできた
きめ細かい結晶のようなおがくずは
透明な花火となって空気中に散りばめられ
紫紺色の風に洗われてきらきらと閃きながら
美しい銀河色の飛行船に変わってゆきました。
こうしてゴロたちは
ほっぺたに生ぬるく湿った風を集めながら
てっぺんの硝子の膜をお椀のような形にくり抜きました。
くり抜かれてできた大きな塊は真ん中に集めて置いて
後でそれをごにょごにょこねてもっと大きい一塊にして
世界中のみんなと一緒にムシャムシャ食べるそうです。
ところでくり抜かれた部分に
ゴロたちは何かをはめ込んでいるようです。
そうです。デンシ石です。
船に乗ってやってくるときにゴロたちが使っていた
あの桃色ステッキにはめ込まれたデンシ石を
ステッキから取り外しては
星明かりのある方に高く掲げてキラッとさせてから
お椀の形に窪んだところに
まるでパズルのようにぴったりと時計回りにまわしながら
キュキュッとはめ込んでゆきました。
とうとうデンシ石をすべてはめ終えると
ゴロたちは一目散にその場所から離れて
みんな中央に集まってきました。
みんなでガヤガヤ何かをしゃべっています。
汗もだらだらかいています。
ぐったりしてうとうとしているゴロもいます。
するとさっきからサァァっと吹いていた風が
しばらくの間ピタッと止まって
海の波音さえも一旦静まり返ったように感じました。
そのときです。
まるでこらえきれなくなったといった様子で
生糸の雷がごろごろと閃いて
辺りはいっぺんに暗くなってしまいました。
空に見えているのはその雷の光ばかりです。
星明かりも隠れてしまってもうなんにも見えません。
風もゴゴォと吹いて、波もグサグサうねりをあげて
草むらで寝ていたゴロたちは
もう大慌てでぴょんぴょんぴょんぴょん飛び跳ねていました。
でもまあるい瞳を朱色に染めた空の上のゴロたちは
いかにも嬉しそうな様子でまたなにかのお祈りをした後
みんなで顔を見つめ合っては笑い合ったり手を叩いたりしながら
ガヤガヤと幸せそうな様子でしゃべっているのでした。
2017/04/07
花火
こんな季節に花火が上がっていた。
なんて綺麗なんだろうと思った。
あ、うん寒かった。でも。
だって今は4月だからね。
ここは北半球だよ。
ここは寒帯だよ。
一つ一つきっちり浮かんでいた。
冷たそうだった。
木の影が投射されてた。
ここは風が強いね。
でも南風なんだってね、これでも。
参ったなぁ。
とにかく寒いんだから。
誰もいやしないんだ、他に。
なんて車が多いんだろう。
でも誰も見ていない。
夜中だし、道も暗くて。
怖がるだろうね。
歩いていらんないだろうね。
早く帰りたくなるだろうね。
そんな風には思わなかったなぁ。
誰か向こうから来ないかって。
むしろそう思っていたよ。
でも星だけだったね。
この黒板を眺めているのは。
一緒に花火を。
いつまで続くんだろうなぁ。
この川は。
この道は。
こんなのヒカリじゃないさ。
こんな花火。
冷たく散ってしまえ。
散らない花火もあるもんだ。
かわいそうなのはどっちだい。
言葉が失われてゆく。
暗く流れて流れるさ。
どこかに合流するんだろうさ。
置いてゆかないでおくれよ。
あれ、雨だ。
2017/04/04
不死鳥のレラエカチ
なにかの前兆のように
不死鳥のレラエカチが
つんざざぁつんざざぁ
ふうりりんと
永久凍土から飛来して
風を吹かせてくれました
青いつららも雪融けて
ぽたぽた落ちる流動体を
湿った上昇気流に変えて
不死鳥のレラエカチは
下界に花を咲かせました
新しい顔を無理してつくった
前のめりのわたしくを
一寸先からなだめるように
頭からつま先まで
まっすぐ立たせてもくれました
もしもわたくしが
夕暮れのようにうつむいて
ヌペハッタラに迷い込んでも
綺麗な星空を見上げたならば
不死鳥のレラエカチが
つんざざぁつんざざぁと
彗星が流れては消えてゆくように
永久凍土から飛来して
きっとわたくしの乱れた呼吸も
ふうりりんと
花たちがぱっと咲き乱れるように
いとも容易く蘇るのです
そしていにしえの手紙を
ゆっくり紐解いてゆくように
わたしはひざを抱えて
不死鳥のレラエカチに
ひれ伏すしかないのでしょう
倒れそうになったら
大地に花を咲かせる
不死鳥のレラエカチ
つんざざぁつんざざぁ
ふうりりん
つんざざぁつんざざぁ
ふうりりん
永久凍土から飛来して
彗星のように風を吹かせる
不死鳥のレラエカチ
2017/04/02
藍鉄鉱
「願わくば、藍鉄鉱になりたし」
前頭葉にせせらぐ言葉の波は
細胞膜に遮られながらも
細胞膜に遮られながらも
息苦しいこの部屋の片隅に吐き出される。
傍らに置かれたハサミをギロっと睨んでから
重たいペットボトルの液体を喉へと詰め込む。
「あなたもきっとそういうことなのですね。
奴隷制の歴史をとうとうご覧になったのでしょう。」
机と壁の隙間から不気味な声が低く響いた。
「あなたもきっとそういうことなのですね。
奴隷制の歴史をとうとうご覧になったのでしょう。」
机と壁の隙間から不気味な声が低く響いた。
無人の偵察機のようだった心持ちも
いまや誰を殺すこともできずに斃れた交戦者のよう。
もしくは無残にも落陽せずに闇を迎えた空のよう。
あれも欲しいこれも欲しいという人には
例えば全てを与えてみよ。
始め一切に胸を踊らせて安楽だった彼も
一つの季節を越える時を待たずとも
次のごとき行為に自らを駆り立てるであろう。
すなわち
大いなる海洋に自らのその宝石のような躯体を
「ああ、わたしは不死鳥にてあらん!」
と喚きながら投げ出すであろう。
またすなわち
傍目から見ればあまりにも不足な暮らしをしながらも
彼自身にとっては特に何も気にすることもなく
むしろ人が満足するところのものを
その半分よりももっと少ない量で満足するような
そんな幸いなる不幸者を
「わたしに姿を見せるな、劣等者よ!」
と喚きながら殺してしまうであろう。
カーテンを閉め切ったこの部屋で
朝と夜の区別もつかず、昨日と今日とに境界線も引けず
古びた蛍光灯の明かりにわかりきった明日を照らすのは
誰がそうさせるのでもなくてそれはやはり
何かが滅びる時の匂いとはどんなものだろうか。
生臭いか、焦げ臭いか、酸っぱいか、苦いか、いや甘いか。
生臭くとも喜ぶ人はいるでしょう。
それは焦げ臭くとも、酸っぱくとも、苦くとも同じでしょう。
しかし甘くともそれを嫌う人もいる。
まるで純真な子を蹴り飛ばすかのように。
問い詰められている。
誰に、何を?
誰もいないのに?
ともすれば死者が?
いいえ、彼らは選り分けます。
この部屋の住人を選びはしない。
しからばなおさら誰によって?
ペットボトルの液体はもう飲み干した。
しかしこの部屋の住人はこう言うのだろう。
飲み干した液体をもう一度満たしたい。
闇が覆った光にもう一度照らされたい。
あのうつしい人にもう一度会いたい。
あたたかきものに強く抱かれたい。
それはあまりにも切実なほどに。
ああ、それは叶わない。
いや、むしろ叶う。
でも、だからこそ叶わない。
つまりそれは叶う、、、
こんなことばかりを繰り返しているのだ。
廻ることしか知らない天体のように。
野良猫が鳴いている。
勘違いではなかった。
以前聞いた声と同じだ。
「甘いケーキはいらない。」
そんな風に鳴いている。
「苦い労働もいらない」
そんな風にも聞こえる。
「お前はどちら側に立つか。」
そう、それを待っていたのだ。
だからわたしはこう答えるのだ。
「願わくば、藍鉄鉱になりたし」と。
古びた蛍光灯の明かりにわかりきった明日を照らすのは
誰がそうさせるのでもなくてそれはやはり
何かが滅びる時の匂いとはどんなものだろうか。
生臭いか、焦げ臭いか、酸っぱいか、苦いか、いや甘いか。
生臭くとも喜ぶ人はいるでしょう。
それは焦げ臭くとも、酸っぱくとも、苦くとも同じでしょう。
しかし甘くともそれを嫌う人もいる。
まるで純真な子を蹴り飛ばすかのように。
問い詰められている。
誰に、何を?
誰もいないのに?
ともすれば死者が?
いいえ、彼らは選り分けます。
この部屋の住人を選びはしない。
しからばなおさら誰によって?
ペットボトルの液体はもう飲み干した。
しかしこの部屋の住人はこう言うのだろう。
飲み干した液体をもう一度満たしたい。
闇が覆った光にもう一度照らされたい。
あのうつしい人にもう一度会いたい。
あたたかきものに強く抱かれたい。
それはあまりにも切実なほどに。
ああ、それは叶わない。
いや、むしろ叶う。
でも、だからこそ叶わない。
つまりそれは叶う、、、
こんなことばかりを繰り返しているのだ。
廻ることしか知らない天体のように。
野良猫が鳴いている。
勘違いではなかった。
以前聞いた声と同じだ。
「甘いケーキはいらない。」
そんな風に鳴いている。
「苦い労働もいらない」
そんな風にも聞こえる。
「お前はどちら側に立つか。」
そう、それを待っていたのだ。
だからわたしはこう答えるのだ。
「願わくば、藍鉄鉱になりたし」と。
ひとりごと
眼をつむっているだけの
こんなわたしにも朝は来ようか
自分で自分を笑うだけの
こんなわたしにも朝は来ようか
人を殺してばかりいる
こんなわたしにも朝は来ようか
どうせもうすぐ死ぬはずだった
こんなわたしにも朝は来ようか
いまのわたしは
わたしにも朝が来るかどうかを
試すためだけに生きています
わたしはわたしが殺した人たちから
おはようと言われているのに
わたしはわたしが殺した人たちに
おはようと言ってやれない
こんなわたしにも朝は来ようか
2017/04/01
川は流れずとも歩きたい
夜が明ければ
「おやすみ」と言い
夜が更ければ
「おはよう」
と言うように
晴れた日には
雨を想い
雨の日には
晴れを想いたい
罪人の中に
わたしを見つけ
わたしの中に
罪人を見つけるように
疑うものを疑わず
疑わざるものも疑わず
ひたすら人を信じたい
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つめたい音 の 降った なら この世の中 には あり、余る。 あついお湯 とか ミルク とか あげる、や 欲しい、も あり、余る。 いなくなったり まだいた り。 「それは雪。 これはわたし。」 いまはどちらも いりません。