2017/02/26

緑が生まれます



朝起きると
大腿の右側から
緑が生まれます。
屈伸すると、
nyon、nyoin、nyon、nyoinと
緑がサワサワ生まれてきます。

外に行くときは隠します。
ぐるぐる包帯を巻き付けて
nyon、nyoinと出てくる緑たちを
強引に押さえつけています。

家に帰ったときですよ、大変なのは。
巻いてあった包帯を外しますと
生まれてくるのです。
緑ではないですよ、それは。

一頭身のオレンジ色の
ほのかに焦げた匂いを放つ
だるまみたいな風来坊が
pyon、pyoin、pyon、pyoinと
分子みたいに飛来するのです。

家中が夕暮れ、絶景ですよ。
壁に張付いたり、外へ飛び出たり
片付けないといけないんですけどね。
疲れますけど、綺麗なんですよ。
神秘というか、、、奇妙というか。

で、一通りそいつを掃除し終わると
静寂につつまれるんです、静寂に。
音もなく風もなく色もなく無感覚。
ひとりでに目蓋がふぅ〜っとね。
この瞬間が心地よくて、とっても。

、、、とまぁ
こんな一日です、わたくしは。
ひゅし、おやすみなさい。



メランコリック



キャベツの森の中
愛らしいメランコリー
ちいさな指は泥だらけ。

幼い唐辛子の実を包みましょう。
空にプリズムをあずけてね、さぁ。
水の公園まで、硝子の自転車でさ。

ご覧、「丁寧に渡りましょう」って。
ほら、用意を済ませてね、早く。
そのあと蒼の埠頭へいくからね。
もちろんパイロットはしゃきっと、ね。

ハッブルの鐘がきこえてきて
牡丹雲も天いっぱいに広がって


———でも、あのころとは、、、







ねぇ、ほらあそこ。
海猫のシンフォニーも素敵ね。
ぶつかり合って溶け合って
きらめき合って消え合って

おいでよおいで、連れておいで
泥をぬぐって下さいな。
海を届けて下さいな。
星をつくって下さいな。

メランコリック、メランコリック。
とっても素敵なメランコリック。
キャベツの森が遠くで光る。

ちいさなちいさなメランコリック。



風の便り



深い濃い町並みを受け取った。


風の便り。
郵便受け。

片方のくちもとに笑くぼが咲いた

重なって溢れる空気をひらくとうれしい

彷徨っていた昨日とは、もうすれ違った

蒸発した葉脈。
太陽の帆船。

2月のふしぎを旅人たちが訪れる

太平洋はちいさなコップに蒼くて

雲の子守唄が遠くまで遠くまで、、、

仄暗く口づける。
時を映すかがみ。

羽ばたくたびに呼応してくれる海のシリウス

なみだを束ねてからすくいあげた砂のしぶきに

みみを悲しませると、鼓動の香りが甘いのだ。

風の便り。
深い濃い町並みで。


落ち葉



無邪気な過ちに対しても

ぼくの狭量なこころは
寛容になれないのか。
あまりにも情けない。

「疑い深さ」というのは
ときにぼくを助けてくれるから
どうしても手を切ることは出来ないのだ。

たしかにそれは
もし自分の手の届く場所に
置かれているのであれば
とても有用な、そして
とても善良な友になる。

しかし
もし一旦その鎖がほどけて
全く施しようが無くなった時には
もはやぼくがそれによって
自らを滅ぼすのは
時間の問題だろう。

それは
決して「条件反射」
であってはいけないのだ。

風に吹かれて頬に迷い込んだ落ち葉と
やさしい眼差しに映る一筋の悪意とを
誰が同様に扱うだろうか?

それはとても分かりづらいものだ。
だれも、まさか離されるのを期待して
差し伸べられた手を握りはしまい。
けれども
少なくともぼくが存在する次元は
ヒトを純粋なものにはしなかったのだ。
それだから「疑」をすべて捨てるのは
あまりにも危険な行為なのだ。

しかしまたぼくは、果たして
、、、<言うのになにを憚ることがあろう。>
落ち葉に対しては、苛立つ理由などあるのだろうか?
もしぼくが、これは誰かによる「謀」だと思うのならば
実に滑稽であり、また狂気であり、切実であり
深い深い慈悲が必要であるだろう。

無いのだ、なにも。
疑うことなど。

むしろそれはぼくに与えてくれたのだ。
全霊な無邪気さとはどういうものかを。
真っ直ぐな営みとはどういうものかを。

学ぼう学ぼう、、、
学び取ろう。
「自然」には疑いなどいらないのだ。
ありのままを受けとめればいいのだ。
ありのままを。


morning



空は晴れ渡っている。
二本の電線の間には真っ白な有明の月が凛と輝いている
雲は一つもなく、言いようのないくらい落ち着いた水色だ
遠くからか近くからか、鳥たちが可愛げに鳴いている
車の音が慌ただしげに聞こえてくる、遠くのほうから
風はとても澄んでいて清らかで美しい、そして冷たい
この風の香りは、小鳥の声とともにこの部屋のもやをすべて洗い落とす
ぎしぎしと雪道を踏み行く足音、月の場所が少し変わった
いのちのこだま、空を彩るのは淡く、柔らかい諧調
街灯が消えるのが早い、もうすべて消えている
本当に穏やかな風だ
電線や木の枝や葉は少しも揺れていない
なにものも風音に遮られることなくこの部屋に届いてくれる
月を見ると、もうあの二本の間からは抜け出していた
細く繊細な月だ、触ればかならず粉々に砕けてしまうだろう
からすたちが影のように飛び去ってゆく
遠くが燃えてきた、突然現れる炎のつるぎ、光のつるぎ
半分しか見えていないのに、なぜこんなにも眩しいのだろうか
月がもう完全に窓枠からはみ出そうとしている
直視することはできない、顔の半分は燃えているのに

生まれる影、影が生まれる

この一瞬にかぎってはなんの煩いもなくなるのだ
月の色はもう輝いてはいない
もう主役ではなくなってしまった
西の空にのぼる太陽に敵うはずなどないのだ
形容しがたい空の色だ、今日の朝は。