2017/02/27

地球の端っこ




四つ、いや六つの電球に灯されて

この地球の端の端に座る。

此処に辿り着くまで
だいぶ手間がかかってしまいましたよ。

昼の空気はとても冷えていました。
そして「ひがし風」も強くて。
さらには、渡りきることも無く
長い長い信号島に漂着しました。

その間に、ぼくは辺りの風景を
向こう岸から気づかれないように
そして
拒否するようにして
見渡してみたのです。

「白い車が多いなぁ。」

白い車がよく目に入った、それだけです。
そう、それだけですよ、それ「だけ」。

すると。
ようやくすべての流れが止まったのです。
(とはいえ、いつも通りの窮屈な街です)

まぁ、なんとか向こう岸へたどり着いたのですが、、、
はぁ、又ですよ、、、又。

また、赤なんですよ。

「急いでいるわけじゃあないしなぁ。」

けれども「ひがし風」は相変わらず冷たく、強いのです。

そのあとは、取り立てて言うこともありません。
コンビニから人がひとりでてきた、とか。
同時にコンビニへ人がひとり入っていった、とか。
後頭部が絶えず寒さで割れそうになった、だとか。
それぐらいしか思い浮かびません、、、、

うん?

いや、すっかり忘れてた。
そうだ、そうそう、そうなのだ。
忘れてはいけないことがありました。
それが今日の一番の光景、、いやいや
「幸景」だったのです。
むしろそれを言うつもりだったのですよ。

なにが「だけ」ですか。
なにが「取り立てて言うことは無い」ですか。
あるではないですか、しっかりと。
一生忘れられないような出来事が。

そう、それはあの長い長い信号を
渡りきった後の出来事なんですよ。

さっきも言いましたけど
ぼくが信号を渡りきった後に見た光景は
コンビニに出入りする人たちでした、よね?
その直後なんですよ。
その直後にその出来事があったんですよ。

たしかそれは楽器店の、、、入り口あたりでしたっけ。
ぼくはそのお店のショーウィンドウに
気を取られていたんですね、すっかりと。
大きなピアノや大きなディスプレイがあってね。
向かい側の世界がガラスにとても美しく映っていたんですよ。
不思議なものですよね。
なんてったって、直接見るよりも綺麗なんですから。
ぼくは時々思うんですよ。
この街の風景がすべてガラスに映った世界であれば、と。
そうしたらこの街に漂うガスの匂いや、雑多な騒音や
目を錯覚させるような喧噪に悩まされなくて済むと思いませんか?
ぼくはいっそのこととびっきりの「ろまんちすと」になれたら
どんなに幸せだろうと思うんですよ。
もしそうなれば、いつ最後の審判が来ようが
まったく気にならなくなるのでしょうからね。

まぁ、これ以上言い続けても、、、ですよ。
勿論、不幸な想像を逞しくするよりは「まし」なんですがね。
いま一番言いたいことはそんなことではないですから。

そうなんですよ。
ぼくがその楽器店の入り口あたりに着いた時とですね
ほとんど同じタイミングで親子三人が後ろの方から
ぴたりとくっついてきていたんですよ。
ひとりはおそらく父親で、あとのふたりは兄弟でしょうね。
その兄弟はちいさくて、7歳と10歳くらいに見えましたね。

それで
ぼくのこころをとても強く揺さぶったのはね
冷たい「ひがし風」なんかではないんですよ。
その時にも相変わらず吹いていましたけども。
そうではなくてですね。
その兄弟なんですよ、こころを揺さぶったのは。
それはほんの一瞬の出来事だったんですがね

 「兄がくるりと廻ると
  弟がにこにこ笑う」
  のです。

たったこれだけのことなんです。
だけどぼくはそれがとても嬉しかったんですよ。
あの可愛らしい笑い声は忘れられませんね。
まるで映画のワンシーンのようでした。
いや、どんな脚本にもなれはしませんよ。
あの瞬間のふたりの喜びは。
まさしくすばらしい光景、、、いやいや

「幸景」でしたねぇ。

それにしてもこの街はどうしたことでしょうか。
ぼくのことを早速現実へと連れ戻すのです。
なにがって?
決まっているじゃありませんか。
信号ですよ、信号。
それと「あづま風」、、、
いや間違えました、「ひがし風」。
どちらでもいいんですけどもね。
どちらも「東」ですから。

とまぁ、そんなようなことがありまして
ぼくは今ようやくここに辿り着いたのです。
どこって?
決まっているじゃありませんか。

四つか六つかの電球に灯された
地球の端の端の、そのまた端に、ですよ。 





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