2017/03/21
長椅子の四人
ええそうですよ。
とにかくあちらをご覧なさい。
地下鉄の改札の近くに長椅子がありましょう。
そこにほら、四人の男女が座っているでしょう。
あなたはそれを右から順番に見てみるといいでしょう。
一人目の女性は、誰かを助けるつもりでいながら
隣にいる人と目も合わせずに下を向いて
次はどこへ行こうだとか、何を食べようだとか
そんなことを考えておいででしょう。
二人目の女性は、生活や人間関係や仕事には
何の不満もない様子でござましょう。
だけどもほら、あなたはご覧なさい。
彼女の視線は一つに定まっておらず
あちらへこちらへと首を振っていますでしょう。
三人目の男性は、身だしなみも清潔で爽やかで
声もたくましく、それでいて優しげでしょう。
あなたはそんな彼の笑った顔をご覧なさい。
その笑顔の先にあなたはいないでしょう。
そして最後の人は、とても姿勢良く座っておいででしょう。
どこか一点をじーっと見つめていますでしょう。
いかにも立派な様子に見えるでしょう。
しかしあの方はもうすでに絶命しておいででしょう。
あの方は誰を助けることも
何かを欲しがることも
自分に満足をもたらすことも
誰かを笑顔で欺くことも
そういうようなことはできなかったのでしょう。
だからああして生きたふりするしかないのでしょう。
あなたはご覧になったでしょう。
四人とも決して改札をくぐりはしないご様子を。
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つめたい音 の 降った なら この世の中 には あり、余る。 あついお湯 とか ミルク とか あげる、や 欲しい、も あり、余る。 いなくなったり まだいた り。 「それは雪。 これはわたし。」 いまはどちらも いりません。
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