だけどね、ガーネット。
これが真実なこころっていうものだろう。
偽りなく自分自身と向き合うってことだろう。
そうかい、ガーネット。
きみはそう言うのかい?
ぼくのことを
なんて寂しいやつなんだと言うんだろう?
いや、ぼくだってね、きみ。
自分のことを
きみの立場になって眺めたことがない
なんてことを言ったら
きみにも、そして自分にも嘘をつくことになってしまう。
そりゃあぼくだってね
うそをつけないほど立派にできてはいないさ。
嬉しくもないのに嬉しいと言ったり
悔しいのに悔しくないと言ったり
欲しいのに欲しくないと言ったり
自分にとってなによりたいせつな人に対しても
そういうことをし続けてきたんだからね。
だけどね、ガーネット。
いまぼくは本当のことを言いたいんだ。
本当のことを言う時に
それをわざわざねじまげて言う必要があるのかい?
本当のこころを白状する時に
わざわざそのこころを嘘で包む必要があるのかい?
ぼくはね
どんなに自分が敬虔そうに見えるときにでも
そのときのこころのなかに
一点の汚れも認めることが出来なかったことなんて
一度たりともなかったんだよ。
そりゃあね、ガーネット。
ぼくだって
とても清らかで
そしてそう
いま木の実をくわえながら飛んでいった鳥たちを
その胸いっぱいに抱きしめている淀みないそらのように
まっさらな人間でありたいと思っているよ。
だけどもほら、ガーネット。
またきみは言うんだろう?
そんな欲望をもってしまっている限りは
まっさらな人間になれるはずないじゃないか。
まずはそういうような欲望すら捨てるべきだろう、と。
ぼくはたまにね
とてつもない孤独に襲われてしまうんだ。
だからそんなときにぼくは
できるだけ多くの人が行き交う場所にいくんだ。
そうするとね、きみ。
ぼくはさっきまでのわびしさっていうのが
嘘のように消えていく気持ちになるんだ。
ほんとうだよ、きみ。
でもね、ガーネット。
ぼくのことを天邪鬼だなんて言わないでおくれ
いまぼくはこうしてひとりきりでいるけれど
ぼくは誰かがどこかにいる気配を感じれば感じるほど
そしてそれによって安心すればするほど
ぼくはぼく自身のための詐欺師になっていく気がするんだ
そしてぼくのこころの底の底の方から自然と湧き出てくる
純粋な水たちがさらさらと干からびていってしまうんだ
だからぼくはそんなときにはいっそのことね、ガーネット。
太陽系からもまるっきり断絶されたような
ぼく以外の一切の存在が閉め出されたような
途方もない遠く遠くで不思議に浮かんでいるような
言葉さえ失わせてくれるような離れ島に
なにかぼくにとって一番たいせつなものを
たったひとつだけでもいいから
ぼくのこころの底の底に握りしめながら
とんでゆけたらいい、なんてことをね。
考えるときがあるんだ。
そうすればね
ぼくはわざわざ着たくもない服を着なくてもいいし
わざわざいろんな色の絵の具を揃える必要もないし
たくさんの調味料で味をつける必要だって無くなる。
そうしてそのあとは難しく考えなくたって
ぼくの中からわき上がってくる水たちを
丁寧に、まっすぐに、両手いっぱいにすくい取って
それをいっぺんに飲み干してしまえばいいだけなんだ
ぼくはそんな瞬間が訪れてくれることを
決して諦めたわけではないんだよ?
でもね、ガーネット。
またぼくはこう思うことがあるんだよ。
つまりぼくはずいぶん昔にね
きみのことを勝手に
「汚れた河で美しく咲く花」
なんじゃないかと思っていたことがあってね.
ほんとうだよ、きみ。笑わないでおくれ。
ぼくは今だって、そりゃあ昔ほどではないにせよ
時々きみのことをそう思うことがあるんだからね。
つまりね、ガーネット。
いま、天高くに灯っている月のことなんて
昼間に灯っていても誰も見てはくれないだろう?
そのときの主役は太陽なんだからさ。
けれども夜になって暗くなるにつれて
彼はなんともいえないくらい魅力的な役者になるだろう?
暗ければ暗いほど、彼はぼくのことを魅了してくれるんだ。
そしてぼくはね、ガーネット。
ようやくきみに白状するよ
その月こそが今のぼくにとってはきみなんだよ。
ガーネット、きみこそがあの月なんだ。
ぼくはね、きみ。
きみのことを見ていると
とても素直で、純粋で、真っ直ぐで、迷いなくいられるんだ。
まわりが暗く、しんと沈みこんでいる時でさえ
何にも囚われずに、ひとり凛と輝いているきみを見ると
ぼくはこのうえもなく幸せでね、きみ。
もう二度と、どこかへ紛れようなんて思わないでいられるのさ。
だからね、ガーネット。
きいておくれ。
ぼくにはきみがいてくれないと困るんだ
ぼくにはきみさえいてくれればそれでいい。
きみがいつまでもそうやって強く輝いていてくれて
この透明な片思いが遠くまでつづいてくれればそれでいい。
そんな風にぼくは思っているんだ。
変なやつだなんて言わないでおくれ。
これがいまのぼくの、真実なこころっていうものなんだよ。
偽りなく自分自身と向き合うってことなんだよ、ガーネット。
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